マナーと習慣

世界の中には、ある地域では当然のように思われていても、他の地域の人にとっては、とても信じがたいというマナーや習慣もたくさんあります。そこで、今回は世界におけるマナーと習慣に焦点を当てて話をします。

日本では人の家に招かれた場合、約束の時間よりほんの少し遅れていくくらいが好まれるようです。これは、客を迎えるホストへの気配りからくるものです。ところが、ラテン・アメリカでは、最低でも20～30分くらいは遅れていくのが礼儀とされています。逆に北欧やドイツ・スイス・ベルギーなどでは時間厳守がマナーとされています。

食事中の作法についていえば、西洋では皿を持ち上げて食べたりするのはマナー違反とされています。一般的に日本の伝統的料理は、基本的には箸だけですべてが事足りるようになっていますが、そのためには皿やお椀を持ち上げて食べるということが必要になります。しかし、同じ箸を使用する中国、韓国でも、基本的には食器を持ち上げません。それは、これらの国では古くからスプーンが発達したためです。

伝統的に日本には、食物を残すのはもったいない、残してはいけないという考えがあります。そのため、私自身もそうですが、出されたものは多少無理をしてもきれいに食べようとしてしまいます。外国でも、例えばハンガリーなどでは、やはり出されたものは残さず食べるのが礼儀だと考えられています。ところが、日本のお隣の中国や韓国では料理を全部食べてしまうと、場合によっては、もてなしが足りないという意思表示ともとられかねません。皿が空になることがおかわりの催促ともなってしまうこともあるのだそうです。

日本人同士の挨拶では、頭を下げるお辞儀が一般的ですが、世界では頬キス、鼻こすり、相手の手のひらにつばをかけるところなど、日本人にしてみるとかなり抵抗があるものが少なくありません。世界中で行われるようになってきている握手でさえ、日本においてはまだ浸透していません。

手振りや身振りにおいても世界では違いが見られます。日本人が「おいでおいで」の意味で使う、手のひらを下に向けた手招きも逆に「あっちへ行け」の意味になってしまうところもあります。欧米や中東では、この場合には、手のひらを上に向けて手招きをするのです。

また、日本をはじめ多くの国では、何かを聞かれた時の返事として、「はい」という意志表示では頷き、そして、「いいえ」という場合は首を横に振るのが普通です。ところが、この当たり前と思える行為でさえも通じない国があります。ブルガリアを旅行した時に実際に経験したのですが、首を左右に振られたのが「はい」の意味だということは頭では理解していてもどうしても慣れず、何度も意味を取り違えてしまい、コミュニケーションが全くうまくいきませんでした。

最近は日本人にとっても世界はぐっと近くなり、今まであまり知らなかった世界の人々や文化と接する機会もぐっと増えてきました。そんな場合に、たとえ少しでも相手の国のマナーを知っていれば、相手のことをより深く理解することができるでしょう。すべてを理解する必要はありませんが、小さなことでもきっとスムーズなコミュニケーションに役立つことと思います。